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Home 9 Q&A 9 医療過誤訴訟は、どのようなところが難しいのでしょうか?

Q.医療過誤訴訟は、どのようなところが難しいのでしょうか?

A. 医学の知識がないと、医療過誤があったかどうかの判断、証拠の収集のための文献検索、意見書作成などができません。また、専門分野になるほど、その分野の専門家のアドバイスが必要になりますので、そのような専門家とのネットワークを持っていないと、訴訟するにあたって専門家を探すところから始めなければならなくなります。
 医学の専門知識がない弁護士には問題点さえわかりませんし、鑑定書や意見書の作成や訴訟中のアドバイスを依頼できる専門分野の協力医と医学知識について話せるだけの医学的知識が必要です。さらに、判断者である医学の専門家ではない裁判官に、医学的知識をわかりやすくかみ砕いて説明できる能力も必要です。医学的知識の基本を理解していなければ、かみ砕いて説明することは困難です。

 現在では、医療過誤訴訟は、専門訴訟の一分野であり、高度の医学知識がなければ訴訟をすることが難しいといわれています。
 特に、患者側の弁護士は、病院側よりもさらに豊富な医学知識が必要です。なぜなら、病院側の代理人をしている弁護士は、長年病院側の代理人を専門に行っている弁護士が多く、経験豊富なうえ、医師側から医学的知識について教えてもらえる環境で訴訟を行うことができます。病院側の医師やスタッフがいるので、医学文献の入手も簡単に行うことができます。
 一方これに対して、患者側の代理人の場合、医師・病院を相手に争うために、医師や病院の協力なしで、診療録を分析する能力、専門書解読能力、医学文献収集能力、英語論文を読破する能力が必要ですし、各科の専門家と良好な関係を築き、いつでも専門知識についてディスカッションできる環境が必要です。経験豊富な弁護士でも、医療訴訟をある程度専門的に扱っていなければ、このような条件をすべて満たすことは困難です。真の専門家といえる患者側弁護士はまだわずかです。

 裁判所の医学的知識は、従来に比べて飛躍的に向上しています。特に、首都圏を中心に、裁判所内に医療集中部が設立され(医療事件を専門的に扱う裁判所の部署)、担当裁判官は、他の裁判官に比べ医学的知識が豊富になってきました。しかし、医療集中部に配転されるのは3~4年間ですので、扱う医療事件の量や理解されている医学的知識にも限界があります。さらに地方の裁判所では、医療集中部ではないということを前提に訴訟を進めていく必要があり、医学的知識を優しくかみ砕いて説明する能力も必要になります。

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医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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