京都第一赤十字病院(以下、京都第一日赤)は、度重なる医療事故や、京都市から行政指導を受けたことなどをめぐり、日本脳神経外科学会から専門医になるための研修施設としての認定を2024年3月31日付けで停止されていたことがわかりました。
学会によると認定の停止は異例の措置だといい、病院の管理体制の改善が強く求められています。当事務所でも、京都第一赤十字病院の脳神経外科が関わる診療行為で医療ミスがあったという相談があり、2024年1月に行われた京都市の行政指導や改善要請を注視していたところでした。
認定停止のきっかけにもなった、京都市からの行政指導について、当事務所にて行政指導内容の開示請求をしてみました。
報道機関が報じた行政指導の内容
2024年1月18日に各機関が報じた京都第一日赤の行政指導に関するニュースを目にされた方も多いのではないでしょうか?
2023年10月、脳神経外科で行われた複数の手術や治療について安全管理の不備などを指摘する情報が寄せられたことから、京都市は3回にわたって立ち入り検査を行ったとされています。報道では、病院の不適切極まりない対応の数々が明らかになりました。
・4年前、脳腫瘍の手術を受けた患者がその後、予定外の再手術となった理由について患者や家族に説明した記録が見つからなかった。
・3年前、救急搬送されて脳の検査や処置を受けたあと、死亡した患者についても詳しい経過を説明した記録が確認できないなど、説明や記録が適切に行われなかったケースが3件あった。
・手術や治療を受けたあと患者が死亡するなどした12件についても検証の必要があるとして2か月後までに報告するよう病院に求めている。(NHK NEWS WEB参照)
京都市へ公文書公開請求
当事務所にて、京都第一日赤の行政指導内容を開示請求したところ、京都市からは以下のものが開示されました。
・医療法第25条第1項の規定に基づく立ち入り検査の結果について
・別添患者一覧
問題事例はなんと61例もあった
京都市の立ち入り検査の結果には、病院に対する指導事項と、複数の事例について再検証を求める内容が記載されていました。対応に問題があったとして再検証を求めた事例は、なんと61件にのぼりました。
開示された別添患者一覧のほとんどは黒塗りとなっていましたが、61名の患者への対応が問題とみなされ、さらにその中で一覧に〇印がついた12名の患者について京都市は京都第一日赤に検証の報告を求めました。
この12名は報道にもあった、手術や治療を受けたあと死亡するなどした患者を指しています。
反省の見えない病院の姿勢
ずさんな安全管理が常態化していたこの病院で起こった数々の問題は、明るみに出ていないものも含めるともっとあるはずです。被害に遭われた方の中には、医療ミスがあったことすら知らないままの方もおられるということです。
京都第一日赤は、学会の対応を受け「大変重く受け止めています。患者さまやご家族に不安を与えることとなり申し訳ございません。専門医研修を予定していた先生方にもご心配やご迷惑をおかけしてしまい、お詫び申し上げます」などとコメントしていますが、ご家族やご遺族に真摯に向き合い、ミスの補償をしようという姿勢は今のところ、全く見られません。
その結果、1件は明らかなミスであったにもかかわらず、適切な補償がされず、話し合いが決裂し訴訟になっていると担当弁護士から聞いています。
京都第一日赤は氷山の一角に過ぎず、日本の脳外科医療の闇は想像以上に深いものがあります。
その「闇」も含めて、医療界を取り巻く様々な問題について今後も発信していきます。