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不整脈のアラームに気付くのが遅れ、生後7カ月の男児が死亡

2024年03月12日 | コラム

大阪医科薬科大学病院(大阪府高槻市)で2023年9月、入院していた生後2カ月の男児が不整脈を発症した際、それを知らせるアラームに気付くのが遅れ、その後、男児の脳に障害が残ったことが捜査関係者らへの取材でわかった。男児は約5カ月後の今年2月に死亡。大阪府警は当時の状況について業務上過失致死容疑も視野に調べている。捜査関係者や遺族によると、亡くなったのは大阪府枚方市の益田悠生(はるき)ちゃん。生まれつき心臓の難病があり、手術のために昨年9月に同病院の新生児集中治療室(NICU)に入院した。手術が予定されていた同18日の未明、不整脈を発症し、救命措置を受けたが、脳に障害が残った。病院側は府警に「看護師らがアラームに気付くのが遅れた」などと説明しているという。悠生ちゃんは今年2月25日に生後7カ月で死亡した。司法解剖の結果、死因は、昨年9月に発症した低酸素脳症による多臓器不全だった。病院側は昨年9月、当時の対応について遺族に説明し、謝罪したという。

(2024年3月6日Yahoo!ニュース)

何のためのアラームなのか

まだこんな事件がなくならないのかと、うんざりする思いで記事を読みました。集中治療室でのアラームが何のために装着されているのか、一般市民の感覚からすればありえないミスだと思います。
しかし、こんな悲しい事故が起こるたび、さらにうんざりするのは、心無い医者たちがネット上で騒ぐことです。

その意見の多くは、集中治療室の状況を一般人は知らないからそんなことを言うが・・・仕方がないじゃないか・・・というような論調で、更にうんざりした気持ちになります。例えば、「アラームなんてそこら中で鳴り続けているから仕方がない」「アラームが鳴っていたら仕事にならないから、アラームオフにしていることも多いし」などというものです。人を相手にしている仕事であるにもかかわらず、悲しいほど想像力が乏しく、創造性に欠ける発言だと思うのです。集中治療室や、手術室など、「人」が「人」のように見えない医療現場に居続けると、「人」の心を忘れてしまうのかも知れませんし、あるいは医師も心が傷つくことを恐れて「人」を相手にしているということを考えないようにしているのかもしれません。それにしても、もし自分の家族がNICUのベッド上で、機械に繋がれている状況で、機械のアラームが鳴り続けていたら・・・と少し考えてみたら良いと思ってしまいます。

もっと建設的な議論が行われるべき

そこら中でアラームが鳴っているからアラームをオフにしていた、という説明も、アラーム見逃しのケースでは常套句ですが、その問題点をどうにかしなければ、と建設的に考えるコメントをする医者はほとんどいません。そのような医療従事者がいないこと自体が問題だと思うのです。本当に緊急事態の場面をキャッチするためのアラームとして、緊急度の高いアラームを、緊急度の高い閾値、音にするような工夫は、機械だからこそ出来ると思うのです。なぜこれほどまでに技術が進んでいる日本で、飲水できる患者の点滴が一時的に詰まったアラーム音と、人工心肺装置に繋がれている患者の心迫や呼吸数のアラームが同じ調子の同じような音なのでしょうか。

他にも、アラームを見ることが出来る医療従事者が限定されているなら、それ以外の仕事は、それ以外のスタッフに任せるという工夫は、なぜ進まないのでしょうか。「みんなが一生懸命働いているんだ!」というコメントは、何の解決にもならない言い訳にしかならないような気がします。一生懸命であれば許されるというのは、極めて幼稚な発想です。一生懸命であるからといって、運転中に人を轢き殺せば責任を負うのです。交通事故なら、その原因を解消するための建設的な取り組みが勧められていくのに、なぜ、医療分野だけが「一生懸命論」にとどまっているのか、「日本中の輝かしい頭脳」であるはずの医師達が、謙虚に考えれば、もっと現状は変えられるのではないかと思うのです。
小さな体で大変な心臓手術を控えNICUに入院していたはるきちゃんの死を、何かの行動に移してほしいと思いました。心からご冥福をお祈りします。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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