上部消化管出血に対して緊急内視鏡ができる医療機関に搬送しなかったケースで医師の責任を認めた
宮崎地裁 平成4年3月27日 判時1446号135頁
夜中の間に4回の吐血・下血があった患者を入院させ、止血薬・抗潰瘍約などを投与していたがショック死したケースで、簡単な問診によって大した出血ではないと判断した医師に対し、丹念な問診を行っていれば吐血量が相当多量であったことを聞き出し、急激な重篤化の可能性を認識しえた、また、自ら内視鏡による止血ができないのであれば、患者を高次医療機関に搬送しなかったことについて責任を認めた。
今では、上部消化管出血の可能性がある患者を、緊急内視鏡ができない施設に搬送すること自体少なくなっていると思われるが、患者が自分で来院した場合には、医師は問診などを丁寧に行って上部消化管出血が疑われる場合には、緊急処置が可能な施設に搬送する義務がある。医師には、本人の吐血量、回数等について詳細な問診をとる義務があり、対応を誤ると消化管出血は常に、失血死のリスクがあると考えて対応するべきである。