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手術標本の切除断端について病理組織検査に提出せず胃癌が残っていたケースについて、標本を提出しなかった医師に責任を認めた

東京地裁 昭和58年1月24日 判時1082号79頁
24歳の出血性胃潰瘍があった患者が広範囲胃切除術を受けた。肉眼的には良性であったこと、患者が若年であったことから主治医は良性だと判断して切除した標本を病理組織検査に提出しなかったが、実際には進行胃がんであり、口側断端にがん細胞が遺残し、がん再発で死亡した。判決は、良性の病変と思われても、悪性変化の可能性が完全には否定できない以上切除標本は病理組織検査に提出すべき義務を認め、医師の責任を認めた。

このケースは、胃潰瘍を疑われているが、そのほかにも良性である胃ポリープや、消化管憩室、虫垂炎、胆石症等でも、悪性の病変がないとは言い切れない。消化器疾患のすべてについて、切除した標本は病理組織検査に提出すべき義務があると考えてよい。
一方、病理検査に提出したところ、悪性病変であったことがわかったケースでは、術前の診断が問題になるケースもある。実際には、画像検査に限界があることもあり、画像所見から悪性の可能性がどの程度疑うことができたか、が問題になる。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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