胃がん見落としについて医師の過失が認められた
広島地裁 平成7年12月5日 判時1589号95頁
胃がんの見落としのケースで問題になるのはスキルス胃癌の事案が非常に多い。スキルス胃癌は、上部内視鏡(胃カメラ)で観察が難しく、上部消化管造影(バリウム検査)でも評価が難しいことも多い。
上記判決では、胃に症状があり胃内視鏡検査を受けたが胃炎と診断されており、その後数か月間も症状悪化を訴え続けていたにもかかわらず、内視鏡検査を再度行わなかったケースで、症状が続いている限り4-5か月後には胃の内視鏡検査を再検すべきであったとして医師の責任を認めている。
また、胃カメラについては、胃内に大量の食物残渣(食べ物の残り)があったために内視鏡検査で十分な観察ができなかったケースについて、漫然と胃炎だと診断していた医師に、責任を認めたケースもある(最高裁判決 平成16年1月15日 判時1853号86頁)。 ここでは、食物残渣が大量に残っていること自体も幽門部(胃の出口)に異常があることをうかがわせること、も考慮している。妥当な判断である。
一方、スキルス胃癌では、進行が急速であることもあり、初めの受診から5か月後に診断がついたケース、7か月後に診断がついたケースについて初めの時期に病変が発見できなくても医師に責任は認めていない。
画像だけではなく、経過中に胃疾患を疑う症状があるような場合には、再度検査を行うべきとされているケースもあり、症状と画像所見を合わせて評価すべきである。