くも膜下出血の診断の遅れについて医師の責任を認めたケース
福井地裁 平成元年3月10日 判時1347号86頁
突然の激しい頭痛・立ちくらみ・嘔吐などの症状により受診した右内頚動脈後交通動脈分岐部動脈瘤患者に対して、くも膜下出血を疑わず、嘔気のみを胃腸炎と誤診して3週間後に再発作が起きて死亡したケース。くも膜下出血に典型的な症状が出現しているにもかかわらず、早期に専門医に受診するよう促さなかった開業医に責任を認めた。
くも膜下出血の診断については、多数のケースがある。広島地裁 昭和62年4月3日 判時1264号93頁も同様に、髄液検査と後部硬直の確認をしなかったことについて、くも膜下出血の診断の遅れを認めている。このケースはやや古い判例であるため、今日では脳血管障害が疑われた時点で、CT,MRIが必要だと判断されると思われる。一方、他の病態が重篤で症状が安定するまでCTなどの検査ができなかったケース(大阪地裁 平成元年7月31日 判タ716号185頁)や、くも膜下出血に典型的な症状経過ではなかったケース(新潟地裁長岡支部 平成10年3月11日 判タ1003号 245頁、浦和地裁 平成13年3月30日)では医師の過失が認められていない。