一般病院での統合失調症症状の再燃について、内服薬の継続などの処置をとらなかった医師の責任を認めた
大津地裁 平成12年10月16日 判タ1107号277頁
40年以上前から統合失調症患者で入退院を繰り返していた患者が、脳梗塞・片麻痺・糖尿病などとリハビリ目的で一般病院に転院した。入院中に、意味不明なことを怒ったように話したり、独語が出現したが、医師は統合失調症の再燃を疑わず、そのうち、同じ病室にいた60代男性の頭部を、ベッドの下にあった角材で殴打して死亡させてしまった。患者は、事故当時、是非弁別能力またはそれに従って行動する能力が全く欠如した状態であったと診断された。
このケースでは、統合失調症の再燃を認識すべき立場にあった一般病院の医師が、抗精神薬を服薬させず、適切な処置がとられていなかったと判断され、医師の責任が認められている。
精神科の患者が一般病院に入院した際には、一般病院の医師に内服継続の判断をすべきであることは当然である。診療情報提供書などによる連携をとって、今までの状態や、現在の状況を精神科の主治医に確認することも容易にできたのであって、一般病院の医師の対応には問題があった。また、精神科と一般病院の関係では、入院患者に、外科的・内科的疾患が生じた場合の転送義務が問題になるケースも多い。肺炎を起こしていたのに、胸部レントゲンを撮らなかった、採血検査を行わなかった等は、病院の過失が認められている(例えば 大津地裁 平成10年3月20日 判タ984号208頁)