入院後早期の自殺について病院の責任をみとめた
東京地裁 平成13年7月19日 判時1777号51頁
入院前1年半、睡眠障害、心因反応性症状、神経症などの診断で外来通院していた患者がパニック状態になり、包丁を持ち出して自殺を図ったりするようになった。そのため、母親が入院を希望し、精神科の入院設備のある私立病院を紹介された。患者は入院を拒否したが、医師の診断はうつ病であると診断され、一旦入院になったのち、一時帰宅した。しかし、自宅で暴れ自殺しようとしたため、家族の希望で隔離室に入院させたところ、入院後5時間後に着ていたTシャツを扉ののぞき窓の鉄格子に括り付け、首をつって自殺していたところを発見された。
このケースでは、外来通院中の医師の診断が、適切な診断でなかった可能性があるとして、慰謝料請求が認められ、入院した病院についても、患者が入院を避けたい気持ちでいたこと、処遇に対する不従順な態度をとっていたこと、数日前からの家庭での状況などから考えて、隔離室での患者の安全を確保し、自殺を防止すべきことが第一次的課題であったとして、自殺を防止すべき義務違反を認めている。
精神科入院中の自殺については、医療機関の責任を追及するための訴訟は多いが、一律的な判断ではなく、各ケースで、自殺を具体的に予見可能であったか、その時期や症状、様子などが争点になっている。頻回の自殺企図や、具体的に興奮・不穏があったケースなどでは予見可能性ありと判断されているケースもあるが、症状が改善傾向にあったケースや、施設外でのケースでは否定されているケースが多い。