肩こりの治療のための頸部ブロック注射後のショック症状について、医師の責任を認めた
東京地裁 平成10年11月30日 判タ1040号261頁
38歳の女性が整形外科で肩こり治療のためのブロック注射を受けた。頸部の注射後にショック症状を起こし、右上下肢の知覚障害、筋力低下、歩行障害などの後遺症が起こったことについて、注射針が椎間孔を通過して脊髄腔内に侵入したことが原因だと認定し、この注射は、神経節・動脈・静脈などが集中している部位に行うもので、実施に当たっては神経・血管を損傷させないだけでなく、椎間孔に注射針を侵入させない義務があった、として医師の責任を認めた。
頸部筋肉内伝達浸潤麻酔、深頸部神経叢ブロックや星状神経節ブロックは、前脊椎麻酔の危険を伴うため、5㎝の針を用いたことで、針を深く刺しすぎた手技上の過失を認めたケースもある。ブロック注射はさまざまな活用がされているが、近年は血管や神経の分布を確実に把握するためにエコー(超音波)検査を用いて行う施設も増えてきている。見えないところに針を進めて局所麻酔薬を投与するため、常に、麻酔薬が血管内に入ってショックを起こす局所麻酔中毒の危険性もある。