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薬剤性ショックについて医師の対応に対する責任を認めたケース

東京高裁 平成61020日 判例時報153442
胃カメラを受けたぜんそく患者が、塩酸リドカインを含んだ溶液で咽頭を麻酔したのち、意識障害・血圧低下の後死亡したケース。病理解剖で、死因は気管支喘息とは認められず、局所麻酔中毒だとされたことが背景にある。
判決では、基準量をはるかに超えた量の局所麻酔薬が投与されたことを理由として、患者は局所麻酔薬中毒で死亡したとし、医師の責任を認めた。

キシロカイン®は、局所麻酔薬として医療現場で日常的に用いられている薬剤である。そのため、この薬剤によるショックの頻度は高く、医療事故の事案数も多い。薬剤性ショックの場合、このケースのように局所麻酔中毒(キシロカイン®中毒)にも通常の中毒量に達していない量であった場合には、患者の異常体質が関与していた可能性があるとして医師の責任を認めなかったケースもある。中毒量に達する量を投与された場合には、医師の責任は認められやすい傾向にある。また、局所麻酔中毒以外の病態として、キシロカイン®によるアナフィラキシー・ショックと思われるケースでは、医師の責任は否定されやすい。
キシロカインの極量は、患者の体重や、小児、高齢者では変わってくる。そのため、体重が軽い小児で、伝達麻酔を行ったケースについては、極量を超えた量の使用と痙攣治療のジアゼパム投与を怠った点の両方について医師の過失があるとされたケースもある(静岡地裁富士支部 平成元年120日 判例タイムズ704252頁)。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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