抗がん剤の治験について医師の注意義務を認めたケース
名古屋地裁 平成12年3月24日 判例時報1733号70頁
「特にプロトコール中被験者保護の見地から定められた規定に反する行為は、特別の事情がない限り違法と評価される」
抗がん剤の治験は、通常の薬剤の投与よりも、人体実験的要素が高い。そのため、患者を被験者とする臨床試験は、専門的科学的検討を経て策定されたプロトコールといわれる治験計画に基づいて、被験者保護に配慮して、慎重に行うべきである、と判示された。被験者保護の観点から定められたプロトコールだからこそ、そのプロトコールに従わない場合には、原則として、医師に注意義務違反(過失)があったと考えられることを示している。ただ、このケースでは、データに虚偽の記載があった等の倫理的問題もあった。また、プロトコールに従わない場合には、その必要性、高度の危険性などについて具体的に説明し、被験者がその危険を承知したうえで選択権を行使する必要がある、として、被験者の自己決定権を尊重すべきことを明示している。