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貧血治療に鉄剤投与し、長期間過剰投与による副作用が出現したケースについて医師に責任を認めた

大阪高裁 昭和54年2月16日 判時947号51頁
鉄欠乏性貧血の患者は多いが、安易に処方されている鉄剤を長期間、過剰な状態で内服し続けると、諸臓器に鉄沈着を起こすことが知られている。このケースでは、鉄剤を8か月間にわたって過剰に投与し続け、皮膚色素沈着・腰痛・肝機能障害を起こしたことに対し、定期的に血液検査を行うこと、効果が得られない貧血については原因精査を行って漫然と過剰投与することを避けるべきとして、医師の責任を認めている。

患者数が多く、食品やサプリメントでも摂取できる鉄については、医療機関が副作用のリスクを自覚していないこともある。このケースでは、定期的な血液検査を行うことで、鉄が十分になっているかどうかの確認が容易にできたにもかかわらず、行っていなかった点を重視しているが、定期的に内服する薬剤では同じ問題が生じうる。

医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

この記事を書いた⼈(プロフィール)

富永愛法律事務所
医師・弁護士 富永 愛(大阪弁護士会所属)

弁護士事務所に勤務後、国立大学医学部を卒業。
外科医としての経験を活かし、医事紛争で弱い立場にある患者様やご遺族のために、医療専門の法律事務所を設立。
医療と法律の架け橋になれればと思っています。
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