脂肪吸引術で、多量の脂肪を吸引して凹凸が生じたケースで医師の責任を認めた
東京地裁 平成8年2月7日 判時1581号77頁
整形外科医院で脂肪吸引術を行ったこと自体も問題があるが、臀部・大腿部の脂肪吸引術を2回行ったが、臀部に術後凹凸が生じたケース。2回目の治療で多量の脂肪を吸引して凹凸非対称が生じたとして、担当医に必要以上の脂肪を吸引した過失を認めた。
美容整形の分野では、そもそも病気ではない状態に対する積極的侵襲になるため、そのほかの分野と比較して医師の説明責任は高いものが要求される。そのため、治療を受けるかどうか、合併症の有無などについて説明をしていなかったことによって、術後合併症についての医師の責任が認められることが多い。
例えば、二重瞼手術では、術後感染を起こした際に、消炎鎮痛薬、抗生物質を投与しなかったことや、手術用絹糸を抜去するべきところ遺残したままであったことなどを医師の過失として認めたものが多い(京都地裁 昭和54編6月1日 判時957号90頁)。このケースでは、二重瞼の手術自体の失敗も主張されていたが、「美しいか否かは、本人の主観によるところが大きい概念」であることなどを理由に、医師の過失は認めていない。
外来通院中であっても、発赤や痛みが増悪するなど感染徴候がある場合には来院させて処置を行うべきだったとして、責任を認めたケースもある(京都地裁 平成7年7月13日 判時1558号104頁)。