冠動脈バイパス術後、目が見えなくなり、数か月後に失明したケースについて、親近性眼内炎を疑って眼科受診し、抗真菌薬を適切に投与しなったとして過失を認めた
名古屋地裁 平成13年12月19日 判時1802号116頁
大学病院で冠動脈バイパス手術を受けた47歳の男性、術後10日目より発熱、14日目に敗血症による腎不全、腹膜透析になった。18日目に真菌であるカンジダが検出された。術後1か月半から2か月たって目が見えにくくなり、意識は改善したもの3か月目に視力障害が重症化した。担当医の責任として、深在性真菌症の発症を疑わせる兆候がないか十分に注意を払い、眼科の診察を受けさせるべきであった、抗菌薬投与の量が不十分で、眼科と相談して増量すべきだった、として医師の責任を認めた。
現在では、カテーテルを挿入する必要性がある患者に、真菌性眼内炎(カビが血流にのって眼内に感染症が広がり、失明に至る)のリスクがあることはよく知られるようになった。特に、数か月のペースで進行する真菌性眼内炎では、手術をした主治医が、眼症状に注意をしておく必要があり、適切な時期に眼科受診し、適切な治療を行うべきといわれている。MRSA感染症とともに、心臓血管外科では注意すべき感染症である。