心臓カテーテル検査中の異常が起こった場合に、検査を中止すべき義務を認めた
東京地裁 平成5年4月27日 判タ824号183頁
心臓カテーテル検査は、心筋梗塞、不整脈、脳血管障害などの重大な合併症を起こすことがあり、合併症のリスクは、心疾患が重症ほど高いといわれている。あくまでも検査である以上、検査前の十分なインフォームドコンセントが重要である。
このケースでは、心臓カテーテル検査中に血圧が200以上に上昇し、胸部不快感と顔色不良が認められたが、ニトログリセリンを舌下して検査が継続された。その後も何度か血圧の異常上昇があり、検査終了後に傾眠傾向、筋緊張・痙攣が出現して脳梗塞が疑われた。その後DIC(播種性血管内凝固症候群)で死亡し、病理解剖で脳梗塞が認められた。判決では、心臓カテーテル検査を実施する医師は、検査中に、何らかの脳血管障害の徴候が生じた場合は、たとえ障害の具体的特定ができなくても、検査を中止すべきであったとして、医師の責任を認めた。
脳内病変や抹消血管病変がある患者の場合、心臓カテーテル検査による重大な合併症のリスクがあり、発症直後や急性期の脳血管障害患者には心臓カテーテルは禁忌といわれている。脳梗塞の発症時期が、検査中かどうかわからないケースでは、医師の責任を否定したものもある(静岡地裁 平成7年2月16日 判時1558号92頁)。