副鼻腔炎の治療として、篩骨洞開放術による失明に医師の責任を認めたケース
福岡地裁小倉支部 昭和55年6月5日 判時998号90頁
鼻内篩骨洞開放術後に、失明に至ったケースでは、耳鼻科医の責任が認められているケースが多い。このケースでも、術後、両眼が異常に主張して明らかに通常の術後と異なっていた場合には、眼科医の診察を受けさせるべきだったとして、転院義務を認めている。
鼻内篩骨洞開放術後の失明の原因は、篩状板を損傷して手術器具を眼科内に侵入させた、篩骨洞内の出血・骨片などを篩骨洞内に侵入させて直接あるいは間接的に視神経を傷害したケース(東京地裁 昭和55年3月31日 判時979号、大津地裁 昭和44年4月9日 判時572号62頁)などがある。この手術に関しては、そもそも副鼻腔炎が良性疾患の治療で手術以外の治療法もあるところ、手術を行うのであれば慎重に行い、重大な失明の結果に至った場合には、他に特別な理由がない限り手術によって失明の結果に至ったと判断されやすい、という点がある。手術と結果の関係が明らかであるため医師の責任が認められやすい。