誤嚥による窒息事故について幼児に与えた食事が不適切であったとして誤嚥の責任を医療機関に認めたケース
東京地裁 平成13年5月30日 判時1780号109頁
4歳幼児が伝染性単核球症による咽頭痛があり食事摂取困難であったが、看護師から患児にバナナを渡し、看護師が見ていない間にバナナを誤嚥した。口腔内吸引、アンビューバックによる呼吸補助、ステロイド投与、気管内挿管を試みたが挿管困難で、トラヘルパー穿刺も行ったが心停止になった。死亡解剖の結果死因は、バナナの誤嚥による窒息と認められた。
判決では、嚥下しにくい状態にあった患児の食事について、誤嚥などを生じないよう食物の種類、範囲を制限するだけでなく、食事担当の看護師に対して、少しずつゆっくり食べさせたり、万が一誤嚥が生じた場合には、直ちに吐き出させたりするために監視するなどの措置をとるよう具体的に指示する注意義務があった、気管内挿管が困難な状況であったから速やかに気管切開に切り替えるべきだった、として誤嚥と救命措置の両方について医師の責任を認めた。
同様の判決は、1歳の幼児に、看護師がコップ状の玩具を与えたために、この玩具が口に食い込んで窒息したケースについて、幼児の行動は一般に予測困難であり、これを見越して不測の事態が行らないよう監視を怠らないのが医療機関として当然の責務であるとして、医療機関の責任を認めている(東京高裁 平成14年1月31日 判時1790号119頁)。このケースでは、面会時間以外には家族の付き添いが認められず完全看護体制にあったのであって、患児の安全に配慮する義務は通常以上に重い、とも判示している。