腎盂腎炎(腎臓の感染症)に対する治療が遅れたことに対する慰謝料を認めた
那覇地裁 平成12年10月17日 判例タイムズ1111号 172頁
腎盂腎炎によって敗血症性ショックになって死亡したケース。感染症について、抗生物質の投与を行っていたことから、一定の適切な治療を行っていたとしながらも、感染源が腎盂腎炎であったことを見逃し敗血症であると認識しながら原発巣を検索することなく抗菌薬を投与するにとどまったことは不適切であるとして、適切な治療を受ける権利の侵害を理由に慰謝料を認めた。
腎盂腎炎は、腎臓から尿管に至る腎盂という部分に起こる感染症で、重症化すると死亡することもある。症状が腹痛や背部痛であることから、感染症ではないと判断されてしまうこともあり、このケースでも、腹部緊満感が出現したこともあってイレウス(腸の動きが悪くなる病態)だと思われて、大腸ファイバーを行うなどの処置をしていたが、腎盂腎炎だと疑えないままショックで死亡している。感染症を疑う所見として、38度台の発熱、白血球数の上昇、CRP高値、尿検査で白血球が認められるなどの事実があったにもかかわらず、感染源を特定するための細菌培養や、画像検査が行われていなかった点について、医師の責任を部分的に認めたケースだといえる。