腰が異常に痛いのは、腸腰筋膿瘍ではないか?!
整形外科に関わる医療相談は、たくさんあります。特に相談で多いのが「治るといわれたのに悪化した」というものです。その中でも最近多くみられるのが、手術は無事に終わったが、その後の感染を見落とされた、というものです。典型的なケースは、手術後、1-2週間で痛みが改善するといわれていたのに、その後痛みがどんどんひどくなり、そのうち足を上げようと思うと痛みが走る、医師に訴えても、リハビリが足りない、と言って取り合ってもらえない、というもの。
実際に、何度も痛みを訴えて、痛み止めの内服薬や点滴をしても増悪する痛みがあり、ようやく医師がCTやMRIを撮ってくれたが、その時には、腸腰筋の感染が下肢にまで広がっていった、というようなケースがあります。腸腰筋とは、いわゆるインナーマッスルといわれる、身体の奥深く、背骨と下肢をつなぐ筋肉で、太ももを持ち上げるときに重要な役割をする筋肉です。この筋肉は、背骨の両脇にあるので、感染が起こり始めたときには腰が痛い、背中が痛い、という症状が出現することがあります。手術後には、長時間寝ているだけで腰痛が起こることがあるので、しばらくすれば治る、などといわれてしまって、見落とされがちなところです。慎重な医師であれば、足を持ち上げようとする際に痛みが悪化するサインを確認して診断することができますが、多くのケースでは、画像を見て初めて診断されることが多い感染症です。時には、CTやMRIで明らかに腸腰筋の中に感染症を示すサインが映っているにもかかわらず、腸腰筋膿瘍であることを見落とすようなひどい医療機関もあります。
患者さんにとっては、なんだかよくわからない痛みがリハビリをしようとするとひどくなるにもかかわらず、リハビリをもっとしろといわれて辛い状態に陥っていきます。
医師の診断能力の一つの目安として、痛みがあるときに、その部位を触って部位を確認してくれるたかどうか、が重症なポイントになります。
なかなか対応してくれなかった挙句、あとになって腸腰筋に感染が、といわれたケースは、画像を見るとかなり前から感染のサインがあることがあります。見落としではないかと疑問に感じた場合には、お気軽にご相談ください。