がんの診断は年々早く正確にできるようになってきました。胃カメラ、大腸ファイバー、CT、エコーなど色々な検査で早期にがんを切除し、完治している患者さんはたくさんいます。一方で、画像診断がどんなに進んでも、まだ手術前には診断が難しい臓器もあります。例えば肺がんは、CTで影が映ってもがんと断定できないため、生検目的を兼ねて切除手術を行う必要があるケースもあります。肝臓がん、胆管癌、膵臓癌等も術前の生検が難しい臓器であるために術前診断が困難で、がんであることを前提に手術をすることがあります。
このような生検が難しい臓器について、主治医からきちんと説明を受けていないと、「がんといわれて手術をしたのに良性だった!」とトラブルになります。また、実際に術前の生検ではがんの可能性が高いと診断されていたのに、手術で切除された標本を再検討すると悪性ではなかった可能性がある、等ということもあります。このあたりの判断は、実際に取った標本を顕微鏡で見て評価する病理医による評価がなければ分かりません。
法律相談に行って、「良性なのに手術をされた」というと、医療過誤だとすぐに考えてしまう弁護士もいますが、臓器によって診断が難しいことをまず知っておく必要があります。
病理診断ミスがあるケース
まれに、術前の画像診断やカルテを詳細に検討した結果、病理診断にミスがあるといわざるを得ないケースもあります。日本全国で病理医は非常に少なく、一人の病理医が担当する臓器は全身にわたります。それぞれの病理医の専門分野ではない臓器で、誤った判断が起こってしまうこともあります。病理診断は、プレパラートという客観的証拠が残っていて、病理診断報告書を作成します。そのため、病理診断報告書の内容とプレパラートをあとから複数の目でチェックすることで、明らかなミスが分かります。客観的証拠があるので、医療機関側の言い逃れが難しい分野です。
患者さんや家族が思っているほど、良性・悪性の判断は明確ではありません。しかし、良悪性が難しかったのか、明らかに診断ミスなのかは、カルテや画像だけでは分かりません。病理診断医と相談しながら検討することで、真実が明らかになっていきます。