脳梗塞は、早期に治療すれば改善が見込める疾患になりました。急に手足の麻痺が生じたときは急いで病院にいけばアルテプラーゼ®という特効薬を使って後遺症を起こさないようにできる可能性があります。この薬剤は、脳梗塞から4.5時間以内に使用する必要がありますので、症状が出てからすぐに病院に行くことが重要になります。
では、裁判では、脳梗塞の見落としは裁判所で認められているのか?
このアルテプラーゼ®が使えるようになったのは2005年(平成17年)です。この薬剤が日本で使えるようになる前には、脳梗塞の診断ができなくても仕方がない、と判断された判例がたくさんありました。しかし、日本でもアメリカにならって日本脳卒中学会から2005年(平成17年)10月にrt-PAアルテプラーゼ®静注療法適正治療指針、2012年(平成24年)8月に治療指針第二版が作成されて、脳梗塞をめぐる治療が進んできたと同時に、裁判例も複数認められるようになってきました。
治療指針が出されたころには、精神科で脳梗塞による痙攣をおこしたケースについて、精神科医には脳梗塞の画像の読影は難しかった、などとして医師の責任を認めなかった判例があります(平成18年(ワ)1244号 平成21年11月10日仙台地裁)。しかし、同じことが精神科でなく救急病院であったとすれば、結果は違った可能性があります。60代の女性が、脳梗塞になって救急病院に搬送され、CTに脳梗塞のサインが出ていたケースでは、裁判所も2012年の治療指針をもとに適切な治療が行われたかどうかを判断しています。残念ながらこのケースでは、脳梗塞が起こってから5時間以上経っていたのでアルテプラーゼ®を使えないケースでしたが、治療指針にあるその他の治療を一つ一つ検討して、実施されていない治療があることを指摘し、治療が適切に行われていれば脳梗塞の後遺症が軽く済んだ可能性があるとして、患者家族の主張が一部認められました(平成(25年(ワ)4560号 平成28年3月8日 大阪地裁)。
急いで病院に行ったのに、なぜ?と思うようなケースはまず、相談してください。